静岡県掛川の海辺から房総の最南端千倉への移築再生である。
だいぶ前から施主は千倉に遊びに来ており、多少でも海が見える場所を探し求めた敷地は海岸から少し離
れた緑豊かな花畑の丘陵で遠くまでの眺望の得られる開けた土地である。解放的な敷地であるから、なるべく自然で素直な形の建物をイメージして設計に取り組
んだ。
設計の主題は花畑、光、風が自然と緑の丘へつながってゆくような、永住型の別荘とすることであった。
既存の古民家を解体して分かったのだが、予想以上に腐れと虫害がひどかった。柱は交換せず添え柱工法で補強し、できるだけ古材をそのまま使用したがこの
工法は大工手間が少々かかり、工務店の苦労が多かったようである。
建築の設計をする時、設計者は一つの手法だけに陥いらぬよう、ちょうど野球選手がヒットを打つためにに体を鍛えるようなことが、建築家にも必要だと思
う。
ひ
とつのシステムを決めて、ものを作れば、そのバリエーションで、ものは展開可能だが、イチローのようにどんなピッチャーの球でもヒットが打てるような努力
は設計者にも必要で、自身のイメージをいつも自由にしておくことが、どんな古民家に出会っても対応できる大切な心構えではないだろうか。